高周波電磁波リスクの論点

5Gで使う電波は高周波に相当しますから、これまでに通信や放送に使われてきた電波の問題の延長線上に、5G電磁波リスクはあることになります。したがって、5G固有のリスクを考える前にまず、高周波電磁波がかかえているリスクに全般に目を向けなければなりません。

次の5点が主だった論点になると思われます。

まず、

1) ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドラインやそれにほぼ準拠した日本の電波防護指針など、現在多くの国々で採用されている規制は、熱作用(マイクロ波による加熱作用)のみを認めており、非熱作用については「科学的に十分な証拠がない」として退けている。

ところが、

2)IARC(国際がん研究機関)の2B評価(※1)にみられるように、携帯電話(スマートフォンを含む)にみられるような近接曝露(電波発信源とそこから放射される電波を曝露する人体との距離が非常に短い場合の曝露)に対しては無視できない疫学データあり、携帯電話の使用に関する何らかの規制や対策を設けている国もある(日本は完全に「無策」)。また疫学のみならず動物実験においても、米国・NTP(国立毒性プログラム)で行われた動物実験(ラット約2000匹をほぼ2年にわたって照射した結果、脳・心臓・副腎での腫瘍の発症リスクが有意に高まった)をはじめ、多数の反証データがある。

という因果関係をめぐっての論争が引き続いている状態です。一方、

3)携帯端末の近接曝露以外の、「微弱長期恒常的」曝露では、曝露量の把握も疾病との相関も未解明であるものの、現実にはトータルの曝露量の上昇があり、電磁過敏症などを訴える人が増加傾向にあると考えられる(※2)。

ですので、例えば携帯基地局周辺に住む住民のなかから体調の不良を訴える人がそれなりの数出てきたとしても、多くの種類の電波が様々な強さと頻度で飛び交う環境において、そうした人々が受ける基地局からの電波の正確な曝露量を把握し、疾病との因果関係を探ることは、大変困難になっています。しかし、2)の疫学調査で「脳腫瘍」に着目してリスクを推定したように、3)においては、環境不耐症と総称される「化学物質過敏症(CS)」「電磁過敏症(ES)」に着目して、それがどのような生活環境、生活習慣、遺伝的素因などのもとに発症するのかを多数の事例を調べることで、解明の手がかりを得ることができる可能性があると思われます(※3)。

一方、なぜ高周波電磁波の曝露によって様々な体調の不良や病気が引き起こされるかについては、これまでの多くの研究事例を、非常に大雑把に括って私見を述べますと、

4)酸化ストレス(活性酸素)の増大と血流変化が主原因となった神経系・免疫系に及ぶ何らかのメカニズムが想定されるが、それぞれの疾病・症状を引き起こすメカニズムは未解明である。

ということになろうかと考えています。何よりの問題は、こうした未解明な点が多々残っているにもかかわらず、

5)「黒(疾病との因果関係あり)と確かに言えないものは白(因果関係なし→安全)とみなす」の論理で電波事業が推進されており、これまで電波の利用は拡大の一途をたどってきたし、5Gの政策にみるように、この先もたどろうとしている。

であると言えるでしょう。

※1

世界保健機関(WHO)の専門組織「国際がん研究機関」(IARC)は5月31日に、「携帯電話から放射される電磁波の暴露によって、脳腫瘍(その一種である「神経膠腫」(こうしゅ=グリオーマ))と耳の聴神経腫瘍(しゅよう))のリスクを高めることを示す限定的な証拠がある」として、携帯電話電磁波を、「グループ2B(=発がん性の可能性がある)」に分類した(文献1)。 

※2

電磁過敏症の診断基準が確立していない以上、その発症者数の把握は原則、できないことになる。ただ、化学物質過敏症と電磁波過敏症を併発するケースが少なくないことを思い合わせると、化学物質過敏症患者(こちらは確定診断がある程度可能)の増加の兆候がみられることが示されていることは(文献2文献3)、電磁波過敏症についてもそうした傾向がみられることを推測させる、といってよいだろう。

※3

電磁過敏症の発症状況の客観的な把握や、その確定診断に向けた新しい科学的知見の探索など、新しい動きも出てきているので、今後も注視していきたい(文献4文献5)。

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